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画像も声も文章も理解する「マルチモーダルAI」次世代AIの可能性と活用のポイント

スマートフォンに話しかけて操作したり、写真を見せて調べたいことを確認したりと、AIとのやり取りはテキスト中心の時代から大きく広がっています。こうした進化を支えているのが「マルチモーダルAI」という技術です。

従来のAIは文章・画像・音声を別々に処理するのが基本でした。一方、マルチモーダルAIは、画像と文章、音声と文脈といった情報を統合し、より状況に即した判断につなげられます。

この記事では、マルチモーダルAIとは何か、なぜ今注目されているのか、そしてどのように活用されているのかをわかりやすく解説します。

マルチモーダルAIとは何か

マルチモーダルAIは、人が「見て・聞いて・読んで」総合的に判断するのと同じように、複数の情報源を統合して判断できる技術です。

総務省は、マルチモーダルAI技術について、以下のように述べています。

「従来のAI学習では、単一の種類のデータ(例えば、テキストデータのみ)が学習に用いられる(一般に「シングルモーダルAI」と呼ばれる。)。これに対し、IoTの進展も相まって、実空間に存在する様々なIoTデバイスから収集されるIoTデータを含め、複数種類のデータ(例えば、テキストデータと画像データ)を組み合わせて学習に用いることで、より複雑な予測を可能とする「マルチモーダルAI技術」が近年登場している。」

出典:総務省 安全なデータ連携による最適化AI技術の研究開発 基本計画書

この技術は、すでに実用段階に入っており、代表例としてはOpenAIのChatGPT(GPT-4o)や、Google DeepMindが開発するGeminiなどが挙げられます。

ここからは、従来のシングルモーダルAIとの違いや、マルチモーダルAIの仕組みを解説します。

シングルモーダルAIとの違い

これまで多くのAIは、文章だけ、画像だけといった一種類の情報をもとに学習していました。こうしたAIは、特定の作業には強い一方で、複数の情報が同時に存在する状況を捉えることは得意ではありませんでした。

しかし近年、カメラ、センサー、音声機器などから多様な情報が継続的に集められるようになっています。こうした背景から、文章・画像・音声など、異なる種類の情報をまとめて扱うAIとして登場したのが「マルチモーダルAI」です。

シングルモーダルAIとマルチモーダルAIの違いを、表にまとめました。

 

項目

シングルモーダルAI

マルチモーダルAI

扱える情報

基本的に1種類(例:文章のみ/画像のみ/音声のみ)

複数種類を同時に扱える(文章+画像+音声など)

入力のイメージ

「文章を読んで答える」「画像だけを分類する」など

「写真を見て説明し質問にも答える」「音声を聞きつつ資料も参照する」など

得意なこと

特定の形式に特化した処理(文章要約、画像分類、音声認識など)

複数情報を組み合わせた理解・推論(状況把握、根拠補強、説明生成など)

必要なデータ

単一形式の学習データが中心(テキストのみ等)

対応関係を持つデータが重要(画像+説明文、音声+文字起こし等)

向く業務

入力が固定で、目的が単純な業務(分類、抽出、要約など)

入力が混在し、状況判断や説明が必要な業務(問い合わせ対応、教育、医療補助など)

マルチモーダルAIの仕組み

マルチモーダルAIの仕組みは大きく2段階で理解できます。まず、画像や音声をそのまま扱うのではなく、AIが処理しやすい共通の形式に変換します。例えるなら、違う言語の情報をいったん同じ言葉に「翻訳」するイメージです。

次に、変換した情報同士のつながりを読み取りながら学習します。「写真のこの部分は文章のこの説明に当たる」「声の調子から感情を推測できる」といった対応関係を理解することで、画像の内容説明や質問への回答などをより自然に行えるようになります。

マルチモーダルAIが注目される理由

政府が示した「AI戦略2022」では、今後のAI技術の方向性の一つとして、マルチモーダルAIの研究開発が取り上げられています。

出典:内閣府 AI戦略2022の概要 令和4年4⽉ 科学技術・イノベーション推進事務局

国の方針では、データを一か所に集めずに学習・推論を行う分散的な仕組みと組み合わせることで、安全性や信頼性に配慮しながらマルチモーダルAIを活用する方向性も示されています。これは、実社会での利用を見据えたマルチモーダルAIの発展を後押しする動きといえるでしょう。

出典:総務省 安全なデータ連携による最適化AI技術の研究開発 基本計画書

ここからは、マルチモーダルAIが注目される理由を詳しく紹介します。

①扱えるデータの種類が大きく広がった

マルチモーダルAIが実用的な技術として注目されるようになった背景には、IoT(モノのインターネット)の急速な普及があります。カメラ、センサー、ウェアラブル機器などが社会のさまざまな場所に設置され、画像や数値データが継続的に取得できるようになりました。

これにより、AIが利用できる情報は、従来のデジタル文書や画像データにとどまらず、「人の動き」「環境の変化」「時間の経過による変化」といった、より立体的なものへと広がっています。マルチモーダルAIは、こうした多様なデータをまとめて扱うことで、一つのデータだけでは見えなかったパターンや変化の兆しを捉えられる点が強みです。

映像やセンサーデータ、文章や画像を組み合わせ、データ間の関係を踏まえて異常検知や状況判断を行うマルチモーダルAIが実用化されつつあります。

②「実社会で使えるAI」が求められている

AI技術が研究段階から実社会での活用へと移る中で、「性能が高いこと」だけでなく、「現場での実用性」が強く求められるようになりました。実際の現場では、情報は必ずしも整った形で存在するわけではなく、不完全で複雑なデータが混在しています。

マルチモーダルAIは、複数の情報を補い合いながら判断できるため、こうした実際の環境に適応しやすい特徴があります。一つの情報が欠けていても、別の情報から状況を推測できる点は、現場で使う上で大きな利点です。

現実世界を多角的に理解し、人の判断を支援するAIとして、マルチモーダルAIは今後ますます重要な役割を担っていくと考えられています。

マルチモーダルAIの活用事例

マルチモーダルAIは、画像・音声・文章といった異なる種類の情報を同時に扱えるため、「複数の情報源を組み合わせないと状況が把握しづらい」場面で力を発揮します。

ここでは、実際のビジネスシーンでどのように活用されているのか、代表的な例を2つ紹介します。

①自動車(運転支援・自動運転)

運転の場面では、カメラ映像だけでなく、周囲の音、車両の速度や加速度、位置情報、路面状況など、複数の情報を同時に扱う必要があります。マルチモーダルAIは、こうした異なる形式のデータをまとめて解釈し、状況をより立体的に把握するための基盤になります。

たとえば、前方カメラの映像で歩行者の動きを捉えつつ、マイクで緊急車両のサイレンを検知し、GPSと地図情報から「交差点が近い」「合流地点に差し掛かる」といった要素を重ね合わせることで、注意すべきリスクを早めに抽出できます。その結果、ドライバーへの警告の精度が上がったり、車線変更や減速の判断がより適切になったりと、安全性の向上に貢献します。

最終的な運転判断や責任は人または車両の安全設計に置かれますが、AIが見落としやすい兆候を先回りして整理することで、ヒヤリハットの低減や運転支援の高度化につながります。

②防犯(監視・入退室管理)

防犯の現場では、監視カメラの映像だけで異常を判定するのは限界があります。現実には、現場の音、入退室ログ、センサー反応、時間帯や場所といった文脈情報が合わさって、はじめて「通常」と「不審」を切り分けられるケースが多いからです。マルチモーダルAIは、これらを横断して扱い、異変の兆しを早い段階で拾い上げる用途で注目されています。

たとえば、夜間の監視映像で人影を検知した際に、同時刻の扉の開閉ログや人感センサーの反応、周囲の物音といった情報を突き合わせることで、「巡回スタッフの動線として自然か」「侵入の可能性が高いか」をより確度高く判断できます。アラートを出す場合も、単に「検知しました」ではなく、「どの入口付近で、何が根拠で、次に何を確認すべきか」まで整理して提示できるため、現場対応が速くなります。

警備担当者の経験に依存しがちな一次判断を支援でき、広い施設や複数拠点を少人数で運用する場合でも、監視の負担軽減とセキュリティ水準の底上げが期待できます。

マルチモーダルAIの注意点

マルチモーダルAIは便利な一方で、扱う情報が多様なぶん、思わぬミスや情報漏えいのリスクも抱えています。安全かつ効果的に活用するために、押さえておくべき3つのポイントを紹介します。

① AIの判断を鵜呑みにしない

マルチモーダルAIは、画像や音声を含めて自然で説得力のある回答を返すため、一見正しそうに見えても実は間違っていることがあります。たとえば、写真の一部が影で見えにくい、音声が途切れている、専門用語を聞き取り損ねたといった小さな問題が、結論のズレにつながります。

特に医療、法律、安全管理など、判断ミスの影響が大きい分野では、AIの回答をそのまま採用せず、必ず人が最終確認する仕組みを作りましょう。「AIがどの情報をもとにそう判断したのか」根拠を確認し、定期的に誤りのパターンを振り返ることが重要です。

② 入力データの質が結果を左右する

AIの精度は、入力する情報の質に大きく左右されます。暗くてブレた写真、雑音の多い録音、表記がバラバラな文章などは、誤認識の原因になります。たとえば、修理依頼で送られてきた写真が暗すぎて部品が判別できなければ、AIは正しい診断ができません。

現場で使う際は、「どう撮影するか」「どう録音するか」「どう記録するか」といった基本ルールを決めておくことが大切です。撮影の角度や距離、マイクの位置、用語の統一などを標準化すれば、AIの認識精度が安定し、現場での使い勝手も向上します。

③ 個人情報・機密情報の扱いに注意する

画像や音声には、顔、声、住所、車のナンバー、社内資料など、個人を特定できる情報や機密情報が含まれやすいため、取り扱いには十分な注意が必要です。AIに入力してよい情報の範囲、データの保存期間、誰がアクセスできるか、顔や個人情報をぼかす処理が必要かなどを、事前に決めておきましょう。

外部のAIサービスを使う場合は、データがどこに保管されるのか、学習に使われる可能性があるのかを利用規約で確認し、社内ルールに合った使い方を徹底することが大切です。また、AIが誤った判断をした場合に「誰が責任を持つのか」を明確にしておくと、現場も安心して活用できます。

マルチモーダルAI活用の鍵は「使いどころ」と「安全設計」

マルチモーダルAIの本質は、現実世界の情報をまとめて理解し、判断と行動を支える知能へ近づくことです。音声でのやり取りがスムーズになり、画像理解の精度が上がり、動画やロボットへの応用が進むことで、AIは「使いたいときだけ開くツール」から「常に隣で支えてくれる存在」へ変わっていきます。

今後の鍵は、性能の向上だけではありません。どの分野で、どんな使い方として実現し、どう安全に運用するか。まずは「どの業務で複数情報の統合が効くか」を見極め、試行と改善を重ねながら安全に使える形に落とし込むことが第一歩です。

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