AIやDX(デジタルトランスフォーメーション)の導入目的として、業務効率化や人件費削減を掲げる企業は少なくありません。実際、これらは導入効果として確実に期待できるものです。
しかし、効率化のみを目的にするのであれば、投資対効果(ROI)は限定的なものに留まってしまいます。AIとDXがもたらす本質的な価値は、既存業務の効率化にとどまらず、従来は実現できなかった新しいビジネス機会を創出できる点にあります。
この記事では、守りのDXから、攻めのイノベーションへと転換するロードマップを、具体例を交えながら解説します。
AIとDXで実現する価値創造の4ステップ
ここでは効率化から価値創造に至る4つのステップを、自治体や企業の取り組み事例とともに紹介します。
【レベル1】業務効率化の基盤をつくる
はじめに、AIやデジタルツールを活用した業務効率化に関する取り組みについて解説します。
定型業務をAIに任せる
AIやデジタルツールが最も得意とするのは、
・請求書の処理
・データ入力
・問い合わせ対応
といった定型業務です。
ある自治体では、AIチャットボットを導入し、1年間で13,364件の問い合わせに対応した事例があります。従来、1件あたり約5分を要していた電話対応業務を自動化した結果、年間66,820分(約1,114時間)ものリソース創出を実現しました。あわせて24時間365日の応対体制が整ったことで、職員の業務負荷軽減と利便性向上を同時に達成しています。
情報を一元管理する
多くの組織では、各部門が個別のシステムやローカルツールでデータを管理してきました。これは全体の可視化を妨げ、迅速な意思決定が困難になります。システム間の連携を進めることで、情報の一元管理を実現します。
ある自治体では、転入届の業務にAI-OCR(文字認識技術)を導入しプロセスの自動化を図りました。従来、職員が手作業で行っていた転出証明書の入力工程を、AI-OCRで自動的に読み取り、住民記録システムとのデータ連携を実現しています。
一元管理をすることで重複作業と手作業によるミスを抑え、データに基づく意思決定プロセスの迅速化が期待できます。
業務プロセス全体を自動化する
定型的な作業フローをロボットに組み込むRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)も、大きな効果を生んでいます。
ある自治体では、毎月の定例的な案内やリマインドメールの送信(通知作業)を完全に自動化しました。さらに、メール自動保存機能の活用も含め、年間2,000時間の削減を実現するなど、年間2,800時間もの事務負担の解消に成功しています。
RPAの導入は多くの自治体で加速しており、年間4,024時間もの削減を達成しています。この実績は業務プロセスの最適化が着実に進展していると考えられます。
・予防接種事業:年間543時間
・子ども施設給付費の請求書作成:年間60.5時間
・固定資産税業務:年間244時間
・還付金消込事務:年間540時間
ここで重要なのは、削減した時間やコストの「使い道」です。それを次なる成長投資や新たな価値の創出へ還元できるかどうかが変革の鍵となります。
【レベル2】顧客との関係を変える
次に、効率化で得た余力を活かして、顧客一人ひとりに合わせたサービスを提供するステップについて解説します。従来型のコスト削減から、新しい価値の創造へと進化します。
顧客データで提案を最適化する
オンラインで買い物をすると「あなたへのおすすめ」が表示されます。これはAIが購買履歴や閲覧パターンを分析し、興味を持ちそうな商品を自動で提案する仕組みです。こうした「パーソナライゼーション」は、今や大企業だけのものではありません。顧客管理システム(CRM)やデータ分析ツールを活用することで、中小企業でも顧客一人ひとりの購買傾向や好みを把握し、最適な提案ができます。
顧客は自分のことを理解してくれていると感じると、そのお店やサービスへの愛着が深まります。これは従来型の効率化では生まれない、新しい価値です。デジタル技術を活用することで、規模にかかわらず顧客一人ひとりに合わせた体験を提供することが可能です。
オンラインとリアル店舗をつなぐ
消費者の購買行動は大きく変化しています。ネットで商品を探して店舗で確認する、あるいは店舗で実物を見てからネットで購入する。オンラインとオフラインの境界は曖昧になり、両者を自由に行き来するようになりました。
こうした変化に対応するには、実店舗とオンラインを統合的に管理する仕組みが不可欠です。在庫情報・顧客情報・購買履歴などが個別に管理されている状態は、顧客にとって使いやすいサービスを実現できません。オンラインで注文した商品を店舗で受け取れるサービスや、店舗の在庫をリアルタイムでネット上に表示する機能は、システムの統合により初めて実現します。
また、統合されたデータを分析することで、より精度の高いマーケティングやパーソナライズされた提案が可能です。さらに、複数システムを一元管理にすることで、スタッフは顧客対応により多くの時間を割けるようになります。
【レベル3】ビジネスモデルを変える
ここでは、デジタル技術を活用してビジネスモデルそのものを変革する取り組みについて解説します。従来の構造や仕組みにとらわれず、新しい収益の仕組みを創り出すステップです。
「モノ」から「サービス」への転換
これまで多くの企業は、製品を売ることで利益を得てきました。しかしデジタル技術により、「製品を売る」だけでなく「継続的な成果・サービスを提供する」ビジネスモデルが可能になりました。
この転換の背景には、顧客ニーズの変化があります。「モノを所有する」ことよりも「必要な時に必要な分だけ使う」ことを重視する傾向が強まっているのです。高額な初期投資を避け、利用した分だけ支払うサブスクリプション型のサービスが広がっているのも、こうした変化の現れといえるでしょう。デジタル技術は、サービス提供を効率的に実現する基盤となります。
製品を売って終わりではなく、「成果」を継続的に提供するには、次のような仕組みが必要です。
・クラウドによる常時アップデート: 最新のソフトウェアを自動配信し、製品価値を向上し続ける
・データ分析による最適化: 顧客の利用パターンを把握し、一人ひとりのニーズに合わせた使い方やサービスを提案
こうしたデジタル技術の活用により、顧客に「成果・サービス」を継続的に提供することができるのです。この転換は、企業の持続的な成長機会を創出します。
中核事業で集めたデータが新しい価値を生む
日々の業務を通じて蓄積されるデータは、デジタル技術により分析・活用することで、従来は想像もできなかった新しいビジネス価値が生まれることがあります。
ある建設機械メーカーは、自社の建設機械にGPSや通信システムを搭載し、世界中の機械から位置情報や稼働状況、燃料残量などのデータをリアルタイムで収集する仕組みを構築しました。
機械の稼働情報や警告データを分析することで、故障が起きる前に部品交換のタイミングの予測が可能になりました。また、燃料消費のデータを解析することで、より効率的な運転方法の支援を実現し、顧客のコスト削減にも貢献しています。
さらに、データは「迅速かつ正確な経営判断」という新たな価値をもたらしました。世界中の機械の稼働状況を集約することで、どの地域で建設需要が高まっているか、リアルタイムの把握を可能にしています。この情報により、生産計画や在庫調整の精度を高め、市場変化に対応する経営体制が強化されました。
中核事業の建設機械販売で集めたこのデータが、新しい価値を生み出したのです。
この事例が示すのは、中核事業で日々蓄積されるデータには、潜在的な価値があるということです。デジタル技術を活用してデータを分析すれば、故障予測、効率化提案、市場予測といった、従来、提供できなかった新たな価値を顧客や自社にもたらします。
【レベル4】イノベーションを生み続ける組織をつくる
ここまでの3つのステップを経て実現されるのが、イノベーションを生み続ける組織への進化です。ここでは、継続的な価値創出を実現するための2つの重要な視点を紹介します。
新たなアイデアの創出
新しいアイデアは、特定の部署や役職者に限定されるものではありません。むしろ、組織の壁を越えた多様な接点により生まれるのです。現場で働く一人ひとりが、日々の業務の中で自然と改善点や新しい可能性に気づいています。
ある電気設備会社では、全社員が経営会議に参加する仕組みを導入しています。経営状況や社内の取組を共有し、誰もが経営に対して提案できる環境を整えました。上司の承認を通さない画期的な制度により、過去には年間200件を超えるアイデアが創出されています。。
重要なのは、アイデアの創出を一過性で終わらせないことです。推進するリーダーを決め、経営会議の進捗を管理することで、提案を形にするプロセスを確率しています。この取り組みを通じて、新規事業や多くの社内制度が生まれ、事業の幅を広げることにつながっています。
出典:厚生労働省 働きやすく生産性の高い企業・職場表彰事例集 魅力ある成長企業 平成28年度
全社員に発信の場を設けることで、思いがけない視点や発想が生まれます。失敗を恐れない挑戦や、小さなアイデアを評価する文化が、継続的なイノベーションを生み出します。経営情報の透明性を高め、誰もが発言できる仕組みを築くことが、組織全体の創造性を育み、未来を切り拓くための鍵となるのです。
組織の枠を超えた外部知見の活用
イノベーションを生み出し続けるには、自社組織だけでは限界があります。大学の研究者、スタートアップ企業、異業種──外部と積極的に連携することで、新しいアイデアが生まれます。
ある製造業の企業は、海外市場への本格進出にあたり、複数の外部専門家と契約を結びました。現地の市場や商習慣に精通した専門家の知見を活用することで、新規顧客の開拓を効率的に進めています。また、海外拠点の決裁権限を推進し、現地での迅速な意思決定体制を構築しました。国内の生産拠点を維持しながら、短納期対応を実現するため、専用の製造部署を設置し、小回りの効く生産体制を付加価値としています。
外部の知見を取り入れ、自社の強みを最大限に活かす仕組みをつくることで、海外展開を成功させているのです。
出典:厚生労働省 働きやすく生産性の高い企業・職場表彰事例集 魅力ある成長企業 平成28年度
こうしたオープンイノベーションの推進は、自社リソースの限界を超え、未来の価値を創出するための強力なエンジンとなります。
これからの時代に企業が向き合うべき課題
AIとDXの活用は、大きな可能性を秘めている一方で、新たな課題も生み出しています。ここでは、これからの時代に企業が向き合うべきテーマを紹介します。
ChatGPTなど生成AIの登場
業務でのAI活用が進む中、企業には新たな課題が生まれています。AIに任せるべき業務と人間が担うべき業務をどう切り分けるか。AIが生成した内容の品質をどう管理するか。こうした課題に向き合いながら、効果的な活用方法を模索することが求められています。
プライバシーへの配慮
データの活用は顧客の個人情報を扱うことに繋がります。その管理を誤れば、企業の信頼は一瞬で失われます。
個人情報保護法の遵守はもちろん、データの収集目的を明確に示し、どのように活用するかを顧客に丁寧に説明することが不可欠です。また、データの保管方法やアクセス権限の管理、情報漏洩に備えた対策など、セキュリティ基盤を強化する必要があります。
顧客にとって、自分のデータがどう扱われるかは最大の懸念事項です。透明性を保ち、適切な管理体制を構築することが、デジタル時代における企業の責任といえるでしょう。
まとめ──効率化の先に待つ、新しい未来
AIとDXは、単に「仕事を楽にするツール」ではありません。使い方次第で、お客様との関係を深め、ビジネスのやり方を変え、これまでになかった価値を生み出すことができます。
大切なのは、「何のためにデジタル化するのか」という目的を明確にすることです。効率化によって創出された余剰時間や資金を、次の価値づくりに投資する。スモールスタートによる試行錯誤を通じて知見を蓄積し、改善を繰り返す。そんなサイクルを組織に根付かせることが、本当のDXです。
業種を問わず、すべての企業にとってデジタル化は避けて通れない道となりました。同時に、これは新しい可能性に満ちた、挑戦でもあります。
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